黎明
萩原朔太郎
漫长疾病的痛苦中,
那面孔生满蜘蛛的巢,
腰以下影子似的消失,
腰以上灌木丛生,
手掌腐烂
整个身体确已一塌糊涂,
啊——今天月亮也出来了,
黎明的月亮在空中出来了,
在灯笼般薄薄的光芒中,
畸形的白狗吠着。
那是向晨光接近的、
寂寞的方向吠着的狗啊。
猫
漆黑的猫有两只,
在烦恼的夜的屋檐上,
高高竖起的尾巴尖处,
丝一样的新月朦胧。
“呜喵,晚上好”
“呜喵,晚上好”
“呜呀,呜呀,呜呀”
“呜喵——这家的主人真病态”
贝
冰冷中降生,
那牙齿在水中漂过,
那手掌在水中漂过,
在连潮水去向都不知道的漂流物上、
在浅滩上踏足的我若是呼唤,
贝壳将以遥远的声音回答。
(维生译)
附
原文:
ありあけ
ながい疾患のいたみから、
その顔はくもの巣だらけとなり、
腰からしたは影のやうに消えてしまひ、
腰からうへには藪が生え、
手が腐れ
身体(からだ)いちめんがじつにめちやくちやなり、
ああ、けふも月が出で、
有明の月が空に出で、
そのぼんぼりのやうなうすらあかりで、
畸形の白犬が吠えてゐる。
しののめちかく、
さみしい道路の方で吠える犬だよ。
猫
まつくろけの猫が二疋、
なやましいよるの家根のうへで、
ぴんとたてた尻尾のさきから、
糸のやうなみかづきがかすんでゐる。
『おわあ、こんばんは』
『おわあ、こんばんは』
『おぎやあ、おぎやあ、おぎやあ』
『おわああ、ここの家の主人は病気です』
貝
つめたきもの生れ、
その歯はみづにながれ、
その手はみづにながれ、
潮さし行方もしらにながるるものを、
浅瀬をふみてわが呼ばへば、
貝は遠音(とほね)にこたふ。